John Henry Bonham #3
改めて言うことでもないですが、このボンゾシリーズ、あくまでもエンジニア視点でお話ししてます。
前回、同時代のライバルともいうべきドラマーたちが在籍したバンドのサウンドを紹介しました。
それらのサウンドを解析することで、より深くボンゾのサウンドを理解したいと思います。
そもそも私が考えるドラムとは、そのサウンド、演奏含めて以下のように位置づけています。
バンドの屋台骨を支え、転がしてゆくもの。それはリズムです。
そのリズムの中心にいるのがドラムです。
楽典的に言うならば、バスドラは、ほとんど場合、小節の一泊目に入ります。
一拍目とは、ロックやポップスにおいてリズムの要です。
この一伯目がバシッと決まることで、バンドは動きます。
かのファンクの帝王、ジェイムス・ブラウンがバンドに口すっぱく要求したThe One !こそ、この一拍目です。
「The One ! 一拍目が一番大事だ。ここだけは絶対外すんじゃねぇ。あとはどう遊んでもらってもOKだ !」
彼の言葉です。
これは、単に、リズムを合わせるだけでなく、そこにインパクトをもたせ、そこに続くフレーズとの抑揚でグルーヴを生み出す、という意味だと私は解釈しています。
そしてスネアは、ほとんどの場合二柏目と四拍目に入ります。
バックビートと言ったりしますね。
一拍目のバスドラに対して、どんなタイミングでスネアが入るのか ? このタイミングと後述するサウンド(音色)で、グルーヴが決まります。
例えば、ピッチ高く余韻が短いタイトなサウンドなら、ゴーストノートも転がって、よりファンキーで軽やかなグルーヴが似合います。逆に、低いピッチで、余韻も長いキックと、ピッチの高低問わず、余韻長く胴鳴りが深いスネアなら、よりヘヴィなロックビートが似合います。
よって、ドラムサウンドが楽曲やバンドのイメージすら決めてしまうことも多いのです。
ということで、長い長い前振りでしたが、いよいよ本題に入りましょう。
いずれも、ウルトラパワフル揃いなのは絶対です。(すいません、キース・ムーンは違うかも?)
そんな彼のサウンドは、ボンゾを上回る26×20インチ(しかもノーミュート&ノーホール)のバスドラと6.5インチの深胴スネアとは思えないほどタイトでキレのいいものです。
逆に言うと、こんな大きなサイズは必要のないサウンドのような気もします。
(実際、レコーディング時は22インチのバスドラを使用)
勿論これは、彼自身のテクニックとチューニングだけではなく、彼らのプロデューサー兼エンジニアの、巨匠マーティン・バーチの手腕によるところも大きいのです。
しかし、このライブインジャパンで聞かれる彼のサウンドは、割と普通です。
手数は尋常じゃないですがwww
大きく穴の空いたホールへ突っ込まれたマイクから集音されたバスドラサウンドは、とてもタイトかつ、少々腰高です。スネアも同様で、ハイピッチ且つ、乾いていてとてもタイトです。
因みに、このレコーディング及びミキシングは、なんと日本人エンジニア、鈴木智雄さんによるものです。
サウンドやチューニングは割と普通です(タムは全部同じチューニングだったとの説あり!)。しかし、プレイにおける個々のサウンドは実に不安定且つリズムもフラフラです。
はっきり言ってヘタクソです。
このバンドは、ドラマーではなくギターのピート・タウンジェントがリズムの要だと思います(笑)
ではなぜここに取り上げたのか? The Whoは、当時を代表する名バンドの一つなのは間違い無く、良くも悪くも彼らのドラマーは、キー・ムーンをおいて他にないからです。
ペイスと比較すると、端正なルックスに似あわず、かなりのヘヴィーサウンドです。スネアは、決してローピッチではないと思いますが胴鳴りが深く、バスドラのチューニングも結構低いと思います。
彼もペイス同様、ノーホールで、マイクはフロントマイクの前で拾っているので余韻も長いですが、それでもアタックはしっかり聞こえます。これは相当キックを強く踏んでるからだと思います。
ビート感も、この曲のようなミドルテンボだとより重く聞こえます。彼自身、より深く、より重く響くように叩いている気がします。
そして、彼の個性的なプレイとも相まって、彼のサウンドも一聴のもとにロジャーだと分かりますね。このサウンドは、マイク・ストーンという名エンジニアの手によるものでもあります。
とにかくバワフル。しかもテクニックも充分な初期ハードロックを代表する名ドラマーの一人だと個人的には思っています。
このビデオでも、そのパワフルさはいかんなく発揮されています。
穴なし且つおそらくノーミュートのバスドラを、まさに突き破りそうな勢いで打ってますねwwww
チューニングは全体的に高めですが、凄まじいパワーで鳴らしきっています。
さて、いよいよボンゾです。
皆さんは、どうお感じになったでしょうか?
これだけの名人揃い(キースは除いて)の後で聴くボンゾサウンド。
それぞれのサウンドが違うのは当たり前ですが、それでも、ボンゾのサウンドは頭一つ突き抜けた感じがしないでしょうか?
例えばスネア。リムに当たるカンッという金属的にサウンドと、それを下から支える分厚い胴鳴り。こんな理想的なスネアサウンドは、彼以外に聞くことはできません。
バスドラも、日本人ならまともに鳴らすことすら難しい26インチ、しかもノーミュート且つノーホール。スタジオで録音した経験からしても、まともなバランスで録ることは相当難しいものです。
それを難なく打ち鳴らし、しっかりとしたアタックと、深い余韻まで聞こえるバスドラ。
しかも高速で打ってもそのバランスに崩れはありません。
スネアとバスドラムの織りなすグルーヴとサウンドは、まさにボンゾだけのものであり、最近You Tube等で聴けるアイソレーションバージョン(楽曲からドラムサウンドだけ抜き出したもの)を聞いても、聞いた瞬間にボンゾのそれとわかる個性。
そして、このサウンドは、当時溢れかえっていたブートレッグ(海賊版)のような粗悪な音質の中でさえ不変です。
そして、どんな曲であっても、バスドラとスネアは、常にはっきりと聞こえます。
まるで、バンドの中心に巨大な岩があるがごとく。だからこそ、Zeppelinのサウンドは、常に圧倒的だと思うのです。
バスドラに関しては、同じ径使用のペイスもロジャーも、同様に素晴らしいサウンドをしていますし、ペイスの高速連打も凄まじいものがあります。
がしかし、スネアサウンドの迫力、鳴り、ではボンゾには遠く及ばないと思うのは私だけでしょうか?
そして、かの帝王のお言葉、One これを体現しているのは、この中ではボンゾだけだと思います。強烈な一拍目のバスドラ、それにがっちり合わせるバンド。
これにより、Zeppelinのサウンドは他を寄せ付けない迫力と存在感を見せつけている気がするのです。
例えば、あの、天才ギタリスト、ジェフ・ベックが率いたJeff Beck Group #1。
(ジェフとジミー、二人ともヤード・バーズに同時期に在籍した、元同僚の間柄であるだけでなく、同じ地区に生まれ育った、いわば幼なじみ)
ボーカルに、ロッド・スチュアートを得たジェフは、Creamを凌ぐハードなブルースロック路線を押し出して登場しました。
その直後にデビューしたのがLed Zeppelinです。この二つのバンドのデビューアルバムには、共通した雰囲気のみならず、明らかにジェフの曲をもじったような曲や、同じ原曲のカバーが入っていて、まるで挑戦状のようにすら見えます。
ジェフは、当然相当ご立腹のようでしたが、ジミーはあのクールなマスクで、そんなつもりは全くなかったと完全否定していますね。個人的にはそんな筈ねーだろっ!と思っていますがwww
結局、この二つのスーパーグループの明暗を分けたのは、リズムセクションだったと思うのです。
方や、元々ギタリストである付け焼き刃的ベーシスト(ロニーごめん)と、常に入れ替わる不安定なドラマー。
方や、超弩級のパワーと繊細的且つ圧倒的にかっこいいフィルを持つドラマーと、一切の無駄を省き、どこまでも曲とドラムを生かすプレイができる玄人肌のベース(ベースのジョン・ポールは実際に売れっ子スタジオミュージシャンだった)。
これじゃ、普通に勝てませんね。
続く
そもそも私が考えるドラムとは、そのサウンド、演奏含めて以下のように位置づけています。
1. ドラムサウンドこそバンドサウンドの要
バンドの屋台骨を支え、転がしてゆくもの。それはリズムです。そのリズムの中心にいるのがドラムです。
2. ロックにおいて、ドラムサウンドの核とはバスドラとスネア
ロックやポップスとは、元々、白人が生み出したメロディとハーモニー、そして、黒人が生み出したリズムが融合して生まれたものです。楽典的に言うならば、バスドラは、ほとんど場合、小節の一泊目に入ります。
一拍目とは、ロックやポップスにおいてリズムの要です。
この一伯目がバシッと決まることで、バンドは動きます。
かのファンクの帝王、ジェイムス・ブラウンがバンドに口すっぱく要求したThe One !こそ、この一拍目です。
「The One ! 一拍目が一番大事だ。ここだけは絶対外すんじゃねぇ。あとはどう遊んでもらってもOKだ !」
彼の言葉です。
これは、単に、リズムを合わせるだけでなく、そこにインパクトをもたせ、そこに続くフレーズとの抑揚でグルーヴを生み出す、という意味だと私は解釈しています。
そしてスネアは、ほとんどの場合二柏目と四拍目に入ります。
バックビートと言ったりしますね。
一拍目のバスドラに対して、どんなタイミングでスネアが入るのか ? このタイミングと後述するサウンド(音色)で、グルーヴが決まります。
3.グルーヴを左右するバスドラとスネアのサウンド(音色)
ドラムは、大きさも多岐にわたり、材質も様々です。そして、各々ドラマーによってチューニングも違えば叩き方も違います。それら全部が合わさって彼らのサウンドになります。例えば、ピッチ高く余韻が短いタイトなサウンドなら、ゴーストノートも転がって、よりファンキーで軽やかなグルーヴが似合います。逆に、低いピッチで、余韻も長いキックと、ピッチの高低問わず、余韻長く胴鳴りが深いスネアなら、よりヘヴィなロックビートが似合います。
よって、ドラムサウンドが楽曲やバンドのイメージすら決めてしまうことも多いのです。
ということで、長い長い前振りでしたが、いよいよ本題に入りましょう。
サウンド解剖
前回ご紹介した、当時を代表するバンドのドラマー達。いずれも、ウルトラパワフル揃いなのは絶対です。(すいません、キース・ムーンは違うかも?)
1.Deep Purple イアン・ペイス
バンド自体、当時のバンドの中でも各メンバーそれぞれ名手揃いの手練れ集団。ペイス自身も時代を代表する名ドラマーの一人です。そんな彼のサウンドは、ボンゾを上回る26×20インチ(しかもノーミュート&ノーホール)のバスドラと6.5インチの深胴スネアとは思えないほどタイトでキレのいいものです。
逆に言うと、こんな大きなサイズは必要のないサウンドのような気もします。
(実際、レコーディング時は22インチのバスドラを使用)
勿論これは、彼自身のテクニックとチューニングだけではなく、彼らのプロデューサー兼エンジニアの、巨匠マーティン・バーチの手腕によるところも大きいのです。
2.Beck Bogert & Appice カーマイン・アピス
彼は、60年代に活躍したバニラ・ファッジのドラマーとして世界中のバンドに強烈な影響を与えました。それは、数々の革新的ドラム奏法やチャイナシンバル等新しいパーツをいち早く取り入れたり、常に、より新しい世界観をドラマーたちに提示していたからでしょう。しかし、このライブインジャパンで聞かれる彼のサウンドは、割と普通です。
手数は尋常じゃないですがwww
大きく穴の空いたホールへ突っ込まれたマイクから集音されたバスドラサウンドは、とてもタイトかつ、少々腰高です。スネアも同様で、ハイピッチ且つ、乾いていてとてもタイトです。
因みに、このレコーディング及びミキシングは、なんと日本人エンジニア、鈴木智雄さんによるものです。
3.The Who キース・ムーン
うーーーん、何と言いましょうか、個性的といえば超がつきますが、とにかく叩きまくりでビートもグルーヴもへったくれもありません。サウンドやチューニングは割と普通です(タムは全部同じチューニングだったとの説あり!)。しかし、プレイにおける個々のサウンドは実に不安定且つリズムもフラフラです。
はっきり言ってヘタクソです。
このバンドは、ドラマーではなくギターのピート・タウンジェントがリズムの要だと思います(笑)
ではなぜここに取り上げたのか? The Whoは、当時を代表する名バンドの一つなのは間違い無く、良くも悪くも彼らのドラマーは、キー・ムーンをおいて他にないからです。
4.Queen ロジャー・テイラー
彼は、ボンゾやペイスと、タムを除きほぼ同じセットを使用しています。ペイスと比較すると、端正なルックスに似あわず、かなりのヘヴィーサウンドです。スネアは、決してローピッチではないと思いますが胴鳴りが深く、バスドラのチューニングも結構低いと思います。
彼もペイス同様、ノーホールで、マイクはフロントマイクの前で拾っているので余韻も長いですが、それでもアタックはしっかり聞こえます。これは相当キックを強く踏んでるからだと思います。
ビート感も、この曲のようなミドルテンボだとより重く聞こえます。彼自身、より深く、より重く響くように叩いている気がします。
そして、彼の個性的なプレイとも相まって、彼のサウンドも一聴のもとにロジャーだと分かりますね。このサウンドは、マイク・ストーンという名エンジニアの手によるものでもあります。
5.Grand Funk Railroad ドン・ブリューワー
カーマイン・アピスもアメリカ人ですが、ドンは、まさにアメリカンの中のアメリカンといった感じ。モロ中西部出身(バンド全員ミシガン州出身)であり、野生的な風貌も手伝って、そのキャッチフレーズである暴走列車そのままのドラムサウンドです。とにかくバワフル。しかもテクニックも充分な初期ハードロックを代表する名ドラマーの一人だと個人的には思っています。
このビデオでも、そのパワフルさはいかんなく発揮されています。
穴なし且つおそらくノーミュートのバスドラを、まさに突き破りそうな勢いで打ってますねwwww
チューニングは全体的に高めですが、凄まじいパワーで鳴らしきっています。
さて、いよいよボンゾです。
皆さんは、どうお感じになったでしょうか?
これだけの名人揃い(キースは除いて)の後で聴くボンゾサウンド。
それぞれのサウンドが違うのは当たり前ですが、それでも、ボンゾのサウンドは頭一つ突き抜けた感じがしないでしょうか?
例えばスネア。リムに当たるカンッという金属的にサウンドと、それを下から支える分厚い胴鳴り。こんな理想的なスネアサウンドは、彼以外に聞くことはできません。
バスドラも、日本人ならまともに鳴らすことすら難しい26インチ、しかもノーミュート且つノーホール。スタジオで録音した経験からしても、まともなバランスで録ることは相当難しいものです。
それを難なく打ち鳴らし、しっかりとしたアタックと、深い余韻まで聞こえるバスドラ。
しかも高速で打ってもそのバランスに崩れはありません。
スネアとバスドラムの織りなすグルーヴとサウンドは、まさにボンゾだけのものであり、最近You Tube等で聴けるアイソレーションバージョン(楽曲からドラムサウンドだけ抜き出したもの)を聞いても、聞いた瞬間にボンゾのそれとわかる個性。
そして、このサウンドは、当時溢れかえっていたブートレッグ(海賊版)のような粗悪な音質の中でさえ不変です。
そして、どんな曲であっても、バスドラとスネアは、常にはっきりと聞こえます。
まるで、バンドの中心に巨大な岩があるがごとく。だからこそ、Zeppelinのサウンドは、常に圧倒的だと思うのです。
バスドラに関しては、同じ径使用のペイスもロジャーも、同様に素晴らしいサウンドをしていますし、ペイスの高速連打も凄まじいものがあります。
がしかし、スネアサウンドの迫力、鳴り、ではボンゾには遠く及ばないと思うのは私だけでしょうか?
そして、かの帝王のお言葉、One これを体現しているのは、この中ではボンゾだけだと思います。強烈な一拍目のバスドラ、それにがっちり合わせるバンド。
これにより、Zeppelinのサウンドは他を寄せ付けない迫力と存在感を見せつけている気がするのです。
例えば、あの、天才ギタリスト、ジェフ・ベックが率いたJeff Beck Group #1。
(ジェフとジミー、二人ともヤード・バーズに同時期に在籍した、元同僚の間柄であるだけでなく、同じ地区に生まれ育った、いわば幼なじみ)
ボーカルに、ロッド・スチュアートを得たジェフは、Creamを凌ぐハードなブルースロック路線を押し出して登場しました。
その直後にデビューしたのがLed Zeppelinです。この二つのバンドのデビューアルバムには、共通した雰囲気のみならず、明らかにジェフの曲をもじったような曲や、同じ原曲のカバーが入っていて、まるで挑戦状のようにすら見えます。
ジェフは、当然相当ご立腹のようでしたが、ジミーはあのクールなマスクで、そんなつもりは全くなかったと完全否定していますね。個人的にはそんな筈ねーだろっ!と思っていますがwww
結局、この二つのスーパーグループの明暗を分けたのは、リズムセクションだったと思うのです。
方や、元々ギタリストである付け焼き刃的ベーシスト(ロニーごめん)と、常に入れ替わる不安定なドラマー。
方や、超弩級のパワーと繊細的且つ圧倒的にかっこいいフィルを持つドラマーと、一切の無駄を省き、どこまでも曲とドラムを生かすプレイができる玄人肌のベース(ベースのジョン・ポールは実際に売れっ子スタジオミュージシャンだった)。
これじゃ、普通に勝てませんね。
続く
おまけ (スタジオセッション。JB風リフで遊ぶ、ボンゾ / ジミー / ジョン・ポール)
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